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前日に続いて伊勢丹のお話。 前日に書いた他にも伊勢丹がお客のことを第一に考える社風じゃないんだな〜と実感させられたことがある。 それは、十年以上前になるが、結婚した際に各方面からいただいたお祝いの返礼の内祝いの品を伊勢丹で頼んだときのことだった。 新婚旅行から帰ると、ダンナさんは職場で「お前、養子に行ったのか」と言われたという。聞けば、内祝い品にかけられた熨斗に、赤の他人の苗字が書かれていたのだという。うるさ型の上司筋の方に届けた分だったので、ダンナさんは大恥かいたとぶんむくれだった。 即座に伊勢丹に「どういうことなのか」とクレームをつけた。すると、まもなく発送担当者の女性から電話連絡が入り、その一件だけ間違って余所の熨斗が入ってしまったようだ、申し訳ない、という。 しかし、どうにも納得いく説明ではなかった。なぜなら、そのとき使用した発送リストの最後に書かれた人ならば、次の人と交じってしまったことも考えられるが、その知らない名前が届いた人の名前は、リストの中頃にあるのだ。おまけに、間違いの発生原因を尋ねると、熨斗は必要枚数だけ印刷し、別の発送セクションで商品に貼っていくという工程を経る途中で間違えたと説明を受けたので「では、私たちの名前の入った熨斗が他の方に届いた可能性があるのですね」と言うと、「いえ、それはありません」と妙にきっぱり即答したからだ。それっておかしくないか。ろくに調べたわけでもないのに、どうして「ない」とはっきり言えるんだ? それまでそんなミスもたまにはあるだろう、運が悪かった、と冷静に対応していた私もそこで「おかしいじゃないですか」とキレた。 そこでようやく伊勢丹は改めて事情説明に伺います、と言ってきた。 ダンナさんが在宅する土曜の午後に約束を取り付け、伊勢丹の担当者の来訪を待った。やってきたのは、制服に派手なピンクのシャツを着て、水色のネクタイをちょっとゆるめに結んだ、いかにも軽そうなチャらい話し方をする若憎だった。 彼は玄関先で1000円のF堂のクッキーを差し出し、「このたびは・・・」と頭を下げて帰ろうとしたので、「ちょっと待ってください。中に主人がありますから、主人に説明してください」と言って中に迎え入れた。嫌々家に上がった体の伊勢丹担当者は、「このたびは大変申し訳ありませんでした」と詫びを入れ、「今後はこのようなことがないよう万全を期してまいります」と言っただけで、何を聞いても何ら具体的な説明もできないまま帰っていった。 おまけに彼は、うるさい客から無事解放された解放感からか、帰り道でフンフンと鼻歌まで歌っているのが見えた。 頭下げて来りゃあ文句ないだろうといわんばかりの極めて軽い対応は、謝って気持ちを鎮めるどころか感情を逆なでするものでしかなかった。 そんなことがあった少し後、高島屋も結婚祝いの品を配送する際に、あるトラブルを引き起こした。 ダンナさんの先輩筋に当たる方から贈られたお祝いの品を、社宅アパートの玄関の横にあるガスや水道のメーターが納められたボックスの中に入れ、書き置きのメモも残さず放置したのだ。 私はそんなところを開けたことがなかったので、何カ月も知らずに置きっぱなしにしていたが、ガスの点検に来た担当者が「以前からメーターボックスの中にお荷物が置きっぱなしになっているようですが」と教えてくれて、はじめて私はその荷物の存在を知った。 即座に配送した高島屋本店に電話をし、事情を話して状況を確認してもらうことにした。 すると、2、3時間ほど後にお客様担当者と名乗る男性から電話が来た。 「配送担当者が不在の折に、お届け物を勝手にメーターボックスに入れたものと思われます。ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません」 といった内容のことを、丁重かつ詳細に説明し、 「お詫びとご説明にお伺いたいので、お忙しいとは存じますが、ぜひともお時間を頂戴したく存じます」 と言った。先方にも事情説明に行って詫びてくれるという。 あまりの感じの良さに気を良くした私が、 「もしかしたら、私が配達の案内のメモを見そこなっていたのかもしれませんね」 と言うと、お客様担当者は、 「誠にお恥ずかしい話ですが、そうではなく、私どもの配送担当者が配達の手を抜いてそのような勝手なことをしたのだと思われます」 と即座にきっぱり否定した。 「お客様から特段の御指示のないかぎり直接お渡しするのが、当店のきまりになっております。配達伝票を調べたところ、受け取り印はなく50歳代の女性に渡したという記載がありました。これは、明らかに私どもの担当者が、意図的に配達したという記録を偽造したものと判断せざるをえません。誠に申し開きのできないことをしたのです。誠に申し訳ございませんでした」 と真摯に謝った上で、直接の被害者であるうちのダンナさんの都合のよい日時に、お詫びに伺うと言った。そのときには、私の感情はすっかり治まっていたが、ダンナさんの意向を聞いてアポを入れた。 約束の日に我が家を訪れたのは、ダークスーツに白いシャツ、落ち着いたストライプのネクタイに身を包んだ、ある程度年のいった物腰のやわらかな、高島屋の代表として来るにふさわしい、実に品のいい紳士だった。 彼は、配送責任者を引き連れ、そのトラブルの発生状況を一からきちんと説明し、どんな質問にも包み隠すことなくひとつひとつ誠実に答えてくれた。そして、 「このような事態を引き起こしましたのはすべて私どもの責任です。お客様のお立場に傷がつくようなことをしてしまい、まったく申し開きのできるものではできません。私どもでできることはなんでもさせていただきます」 とまで言ってのけた。 何も私たちはモンスター・クレーマーなわけではない。きちんと納得できる説明とお詫びをしてもらい、結果として無礼を働いてしまった品物の贈り主に対して事情を説明し、私たちが申し開きのできる状況にしてもらえればそれでいいのだから。 高島屋のお客様担当者は、伊勢丹が置いて行ったのよりかなり値の張る和菓子を私たちのもとに置き、これから贈り主のところにお詫びに行って参ります、と言って我が家を辞去した。 あとで聞いたところによると、先方様は外出しており、帰宅はかなり遅い時間だったというが、高島屋のお客様担当者と配送責任者は家の近くでじっと帰宅を待っていたのだという。 高島屋の対応は、それはそれは見事なものだった。 いくら高島屋だって、配送担当者まで社員ということはなく、別会社に発注しているのだと思う。それでも、配送会社に責任を押し付けるような言葉は一言も吐かず、「すべて私どもの責任です」と頭を下げてみせた。 高島屋は、高島屋の名においてなされたことは配送に至るまですべてが、お客にとっては「高島屋」として認識されることを、きちんと認識しているのだ。 前日、伊勢丹吉祥寺店での経験について触れ、伊勢丹の「お客ではなく、内向きの仕事を重視する姿勢」を嘆いたが、まさにこの企業文化こそが一流と言われる百貨店と、そうでない百貨店の根幹をなす違いなのだと私は思う。 問題の大きさや質の面でいえば、うっかりミスだった伊勢丹にくらべて、インチキをしでかした高島屋の方がずっと悪質だ。それでも、高島屋は私に悪感情どころか、「感動」を残してくれた。 一流の仕事ぶりを見せてくれた高島屋に敬意を表したい。 さようなら、伊勢丹吉祥寺店。 私は高島屋本店が似合う人間を目指します。 |
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