愛なき者は去れ!

トヨタのリコール騒動が悲しい。ブレーキに苦情が多発していたら、「自分たちの作った車に何があったんだろうか」と徹底的に追及し、安全性の高い車を生みだしてきたのがトヨタイズムじゃないか。
官のテコ入れのおかげで息を吹き返し、カネを生む体制が再生できたらそれでいいのか。情報を知りつつ、誰も、何の対応もできず、大規模なリコールを引き起こした「トヨタ」。そこに、「トヨタ」に対する愛と誇りはあったのか。

角界の一連のおバカな騒動が悲しい。場所中に深酒してトラブルを起こしたと疑惑を持たれる横綱に何も言えない、なめられきった親方、いまだ何らまともな対応ができない角界の理事たち、理事選でのドタバタ・・・。コワイ筋の関連も取りざたされる中、大金脈であるスターが不在になる不安なのか、何も動けないでいる角界に、相撲に対する愛と誇りはあるのか。

政界の政治資金問題も悲しい。はとポッポのお小遣い問題は、あんなに簡単に終わってしまってよかったのだろうか。相続税はもう払ったのか?そんな続報すら報じられないまま終結させてしまった報道各社の姿勢って、本当にあれでよかったのか。
一方の幹事長の土地取引問題では、当時、幹事長の秘書を務めていた議員のもとで働いている女性秘書を軟禁状態にして取り調べをしたと『週刊朝日』(2月12日号)誌上で取り上げられている。この女性秘書には保育園に通うお子さんがいるというのに、お迎えを頼む電話すらさせなかったと報じられている。子どもの身体生命の安全の確保、最低限の人権すら無視した検察には、「意地」以外の何者も感じられない。そこに、人間としての最低限の愛と、法にのっとって国と国民を守るという職務に対する誇りはあったのか。

そして、私が直に接した悲しい話をもうひとつ。
先日、伊勢丹吉祥寺店に行った。同店は、今年3月に撤退することが決まっており、年明けから閉店セールを開催している。
実家がこの近くにあるため、開店直後からちょくちょく利用していた馴染みの店である。それが閉店ということで、先日、用事のついでに立ち寄った。
その日は日曜ということもあり、押すな押すなの大盛況。買う物を選び、レジに向かった。私の買い物の会計を担当したのは、30歳代半ばとおぼしき男性社員。パートでもなければ臨時アルバイトでもない。
そこで、この店に別れを惜しむつもりで、包んでもらっている間にその店員さんに声を掛けた。
吉祥寺店は、開店から何年たつのですか
消えゆくこの店に対する敬意を込めたつもりだった。しかし、男性社員の返答に呆然とした。
え~っと、何年でしたかね・・・。たしかさんじゅう・・ご年?いや、三十四年でしたか・・・?ちょっと、はっきりとは・・・」
と口ごもった。私が表情を変えたことに気づいたらしい男性社員は、
「新宿、立川のあとなんです。だから・・・え~っと」
と何とかとりつくろおうとするので、
いえ、もう結構よ。ありがとう
と慇懃に微笑んで立ち去った。

自分の勤める企業の、重要な拠点がひとつ消えようとしているのだ。この店が、吉祥寺という街の中でどのように息づいてきたのか、どんな歴史を刻んで、どのような経緯をたどって、何年で歴史を閉じることになったのかについて、なぜ興味を持たないのか。
なぜ自分が禄をはむ店のことを、わが子とまではいわないが、かわいがってくれたおじいちゃんくらいには愛せないものなのか。おじいちゃんが長患いの末、そろそろ穏やかに最期のときを迎えそうだという状況なったときには、おじいちゃん何年生きたよねとか、あのときこんなことあったよね、とかいう話をするものではないのか・・・。
伊勢丹の社員は、吉祥寺店になんの思い入れもないのか・・・。
そんな思いが頭をよぎり、何だかちょっと悲しくなった。

1シーズン前の冬、私は吉祥寺でブーツを購入した。
伊勢丹で買おうとあれこれ見て試したが、なかなかぴったりくるものがなく、店員さんに声を掛け、希望のサイズと色、デザインを伝えて探すのを手伝ってもらった。しかし、平日の午前中で客などほとんどいなかったにもかかわらず、私に対する対応は、実におざなりなものだった。やむなく自力でこれは、と思うものを見つけて試し履きしたがしっくりこなかったので、再び店員さんに声を掛け、「足首の部分がたるんで見えるのだけど、どう思いますか」と聞くと、ちらっと見て「ええー、そう・・ですか・・・」とだけつぶやくように言った。その対応には、商品に対する愛も、お客に対する誠意も、売るぞという仕事に対する意気込みも、みじんも感じられなかった

私は即座に立ち去り、近くにある東急百貨店に移動した。
ここでも気に入ったブーツを試すとやはり足首の部分がたるんで見えるので、店員さんに声を掛けて「足首の部分がたるんで見えるのだけど、どうですか」と聞くと、東急の店員さんはこう言った。
今年のブーツは、パンツの裾をブーツインすることを想定してデザインされているので、足首の部分にすこし余裕を持った作りになっているのです
なるほど。それなら、少しくらいたるんでいてもおかしくないですか?」
はい、もちろんです。パンツにもスカートにも、どちらにも合わせていただけます

この対応の違い。どちらで買う気になるかは明白だ
その日、私は伊勢丹の商品券を持参していたし、伊勢丹提携の駐車場に車を入れたので、伊勢丹で買えば駐車料金が浮く。しかも、その日、どうしてもブーツを買うつもりでいた。
そもそも吉祥寺エリアにおける伊勢丹と東急のステイタスには雲泥の差がある
伊勢丹はちょっとおしゃれで高級だし、東急はお手頃で庶民的だ。どうでもいいときは東急でよいが、ここぞというときには伊勢丹で買いたい・・・。それが吉祥寺族の当たり前の感覚なのだ。
モチベーションは十分高まっていた。にもかかわらず、伊勢丹は、私の買う気をなえさせ、東急にお金を落とさせる結果を生んだ。

伊勢丹と吉祥寺の街は、よくマッチしていた。それは高島屋と二子玉川の相思相愛関係に通じるものがあった。なのに、ニコタマの高島屋は脈々と息づき、ジョージの伊勢丹は消えていく・・・。
吉祥寺族はたしかに伊勢丹を愛していたと、私は思う。でも、伊勢丹は吉祥寺の街にどれだけの愛を注いでくれたのだろうか。
社員に「愛」のない店なんて、吉祥寺の街の人に愛されるわけがない。潰れて当然だ、と思わざるを得なかった。
それがなぜか無性に悲しかった。

朝日新聞1月22日夕刊には、富士通社長に山本正己氏が就任するという記事が載っていた。その記事を見て、20年ほど前のある夜のことを思い出した。
夜遅い中央線の車内で、私は自宅に持ち帰って処理しなければならない仕事があったため、職場の富士通オアシスのワープロを抱えていた。そこに目を輝かせて声を掛けてきた男性がいた。新手のナンパかと思ったが、違った。
「あ、オアシスお使いいただいているんですね。使ってみてどうですか、これ。実は私が開発したんです
と言って、名刺を下さった。それが、今回社長就任が決まった山本氏だった。
彼は、自分が精魂傾けて作り出したオアシスを抱えている人を見たら、うれしくてうれしくてワクワクして、声を掛けずにいられなかったのだろうそれが、自分の仕事に対する「愛」なのだと、私は思う。

最後に今日の一言、愛なき者は去れ。



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